頚部痛患者に対する筋膜への介入
頚部痛の施術がうまくいったので、頚部痛を施術する際に、私が注目していることを少しシェアします!
頚部痛のご新規、Aさん。2年前に交通事故に合い、事故以来、頚部痛はひどくなり、頭重感や強い眼精疲労、睡眠障害もあるとのこと。
一般的には、交通事故と頚部痛には因果関係がある前提で評価、治療されることが多い。
しかし、「交通事故」にひっぱられすぎると、頸部痛への介入は失敗するというのが私の自論だ。
大事なのは、交通事故ではない。
事故より昔から頚部痛があるかどうかだ。
Aさんは柔道をやっていて、事故以前から常に頸部に問題を起こしていたことがわかった。
だから、事故が原因ではなく、もともとあった頸部痛が悪化した状態で続いているだけだと捉えた。
では、もともとあった頚部痛は、どこの筋膜機能異常が引き起こしているものだろうか?
通常であれば、筋膜代償の成り立ちを考えるが、今回は痛みの出方に注目したことが功を奏したので少しご紹介。
痛みの出方のパターン
痛みの出方には3つのパターンがあり、それぞれが介入のためのヒントになります!
- ある特定の方向だけが痛い場合
- どの方向に動かしても痛い場合
- 動かしても制限はないし、痛みも強くならないけど、常に痛い場合
今回は2つ目に当てはまった。
どの方向に動かすにもゆっくりで、「詰まる」「張る」「怖い」という。
どの方向に動かしても痛い場合に考えられる可能性は2つ。
- 矢状面・前額面・水平面のすべてに筋外膜を中心とした滑走不全がある場合
- 胸部・頸部の腱膜様筋膜(aponeurotic fascia)を中心とした滑走不全がある場合
次に評価する領域を決めるのだが、今回は、頸部・胸部・肩甲帯の3分節を選択した。
初学者にアドバイスをするならば、評価する分節は1つ飛ばさなければいけないといったルールなんてないことを覚えておいてほしい。
触診をしていくと、すべてが過敏な状態だった。
こんなときは、自分の触診を信じることに集中。
すると筋外膜上には、高密度化がほとんどないことがわかった。
おそらく、先に述べたように、胸部・頸部の腱膜様筋膜(aponeurotic fascia)を中心とした滑走不全が、頚部痛や頭重感を引き起こしているのだろうと考えた。
私は、1回で高密度化を断定することは絶対にしない。
評価する分節を最低3周して、施術する場所を極力少なくするために比較検証を大切にしている。
触診の結果、1番怪しかったのは両側の胸鎖乳突筋の胸骨頭起始部だった。
頭重感も再現される。
頭重感と眼精疲労もあったので、頭部へと触診をのばし、右の下顎(歯茎あたり)にも高密度化を見つけた。
前面の筋膜ラインが影響している可能性があるが、体の背側には一切高密度化はなかった。
この条件がそろえば、もっと内部臓器に関連するような症状がでていてもいい。
質問で再確認すると、大好きだったお酒が胸焼けのせいで飲めなくなっていたり、喉に異物感を感じることも多いことがわかった。
やっぱりだ。頸部痛と上記の症状は関係がある! 経験上、ピンときた。
治療のポイント
両側の胸鎖乳突筋の胸骨頭起始部を2箇所リリース。
頭重感は再現されるし、胸焼け感も再現される。
2箇所をリリースしただけで、頸部の可動域はFull、痛みゼロ、こわごわゆっくりと動かすこともなくなった。
最後に念の為、下顎へ介入。
ここでも頭重感が再現され、影響があることがわかった。
全部で3箇所で終了。
とても満足していただけた。
頚部痛患者さんをみるときは、交通事故に意識を引っ張られすぎず、そもそもいつから頚部痛があるのかを確認して、痛みのでかたにも注目してみて欲しい。
ぜひご参考に!!!
今後もFascial Treatment Labでは症例報告などアップしていきます!