切迫流産の妊産婦腰痛に対する筋膜介入
切迫流産の妊産婦の腰痛に対して筋膜アプローチが効果的だったのでご紹介します。
切迫流産とは…
早産とは正期産より前の出産のことであり、正期産とは妊娠37週0日から妊娠41週6日までの出産のことをいいます。日本では妊娠22週0日から妊娠36週6日までの出産を早産と呼びます。妊娠22週未満の出産は流産といい、早産とは区別されます。
(日本産科婦人科学会より引用)
ということから、妊娠中の状態ではありますが、妊娠初期に切迫となり、安静期間が長いというところが特徴と言えます。
症例紹介
- 妊娠33週の妊産婦
- 29歳女性
- 妊娠21週から切迫傾向で「切迫流産」の診断を受け、一時入院安静。
- 3ヶ月近く、入院と自宅安静を繰り返しており、ほぼ臥床生活を送られている。
- 切迫診断を受けた頃から腰痛発症
- 今回は、主治医に理学療法士によるコンディショニングの許可をいただき、腹臥位以外は無理ない範囲で良いと指示をいただき介入となる。
- 痛みの部位
右仙腸関節外側
- 疼痛出現条件
背臥位、左方向への寝返り
- 運動機能
右股関節の運動性が乏しく、明らかにstiffnessあり
脊柱mobility、特に胸椎、胸腰椎移行部に認める
印象として、今回の仙腸関節痛に関しては、胸腰椎–骨盤–股関節複合体の機能不全として考えた。
筋膜評価
これを筋膜機能として見ていくための視点としては、
- 痛みは胸腰椎–骨盤–股関節複合体の運動機能が高まれば解決しそうだ
- では、なぜ複合体に機能不全が起こったのか?
- 股関節、胸椎にstiffnessを起こしているのはどのセグメントの影響なのか?
そこで、
股関節
胸郭
膝(ときどきかなり軽度の痛みを感じる)
のセグメントの筋膜を評価することにしました。
筋膜評価の結果、
①右坐骨結節外側
②外側ハムスト停止腱部
③肩甲骨内側縁・広背筋下縁
に筋膜滑走不全を確認。
後外側の筋膜ラインにに機能不全を呈していることが示唆された。
さらに後外側のラインで周囲に広げて触診していくと、
右腹直筋・腹斜筋間(臍レベル)に強い滑走不全が確認された。
トータルすると、
①右坐骨結節外側
②右腹直筋・腹斜筋間(臍レベル)
③右外側ハムスト停止腱部
この時点で体幹(内臓)の影響もよぎったが、反対側に目立った滑走不全は見当たらなかった。
特に①②は主訴の痛みを再現させることがわかり、
上記3点に介入を決定。
刺激強度に気をつけながら、
マイルドに触知を開始し、
筋膜治療の一般的な摩擦熱の刺激ではなく、
組織が徐々に緩むように手掌による介入を主とした。
結果、
痛みだいぶ軽減しました。
10→3
ですが…
- 背臥位で踵をつけながら下肢を屈曲するとき
- 背臥位で臀部を持ち上げようとするとき
この2条件で痛みが若干誘発される。
(当初の痛みよりはだいぶ良い)
寝返り等の痛みも解消している。
「うーんこれは再発するな…」
「まだいける!!」
と思い、詳細を追求した。
痛みの誘発条件から推察すると、
下肢屈曲時に誘発することから下肢が寄与している可能性あり。
さらに、
臀部挙上(軽度ブリッジ)の誘発から、同動作で支店となる胸郭、肩甲帯 or 踵部 などの寄与を示唆。
そこでもう一度触診を確認していくと、
右外側広筋・筋膜張筋間の滑走不全を確認。
ここをリリースすると、
下肢屈曲時の痛みは解消。
さらに、
ブリッジの痛みに影響すると思われる、
胸郭肩甲帯、踵・アキレス腱を触診してみると、
広背筋と肩甲骨内側縁の部位に滑走不全あり。
同部位の治療介入により、ブリッジ時の痛みも解消。
そして、寝返りやその他疼痛誘発動作もなくなり、筋膜滑走不全も落ち着いていることを確認して、介入終了とました。
副産物として…
本人がおっしゃるには、切迫で下がっていたお腹が上がっているんだとか。
いやいや、それはどうかなと思いつつ、滑走不全が改善して、姿勢や動きが楽になった分、そう感じるのかなと解釈しています。
でも、経験的には、
切迫の要因が子宮頚菅の短縮ではなく、お腹の張りの場合、筋膜介入が相性いいことは経験しています。
今回の方は、子宮頸管の方だったので、解剖理論的にはありえるなとも思いますが、今後も症例数重ねて見ていきたいところです。
以上、
切迫妊産婦の仙腸関節痛に対する介入報告でした。